「迷子になっちゃったの?」


修学旅行の自由時間、一人で昭和記念公園の中のベンチに座っている時

声をかけてきたのは、同級生の悠一。


眼の形が逆三角で、パーマ頭に、大きなピアス。やたら色白で、なんか、音楽やってます!って感じで、ちょっと怖い奴・・・。


「別に・・・」


私は、友達とはぐれて、探し疲れて、おっしゃる通り、迷子になってベンチで途方に暮れていた訳で・・・。



「まぁ、迷子か?って聞かれて、ハイそーですって、言えるほどガキじゃねぇか」


悠一は、掠れた高い声で、笑ってるけど、私は別に面白くない。



「あんたこそ、一人でなにやってんのよ」


「オレは、その、なんだ・・・。まぁ、迷子だ。」


「バカじゃないの」


今度は私も、ちょっと笑った。



「一緒に、いたやつはどうした?」


「私がトイレ行ってる内に、いなくなっちゃって・・・。公園のところかな。」


「じゃ、オマエも迷子じゃん」


悠一の逆三角の眼は、さらに細くなってる。


「ちがうし、あんたどっかいけば?」


「怖っ」


いけない、また私やっちゃう・・・。どうしていつも、素直になれないんだろう、みんなだってそういうところ

あると思う。でも、仲良くやってる。


でも、私はうまくいかない。今一人になってるのだって、きっと・・・。



「あ、携帯鳴った」


「別にいちいち報告しなくてもいいし」


あーあ、かわいくない、かわいくない、かわいくない。別に悠一なんて、よく知らないし、どうでもいいけど

かわいくない。



「あ、そうか。おっけー」


「なぁ、バーベキュー場の辺りで、イベントやってて盛り上がってるらしいぜ」


携帯を切った悠一が、私の目の前に来た。



「 オレ達も、行こう― 」



俺たちだなんて・・・



「なんであたしがあんたと行かなきゃ、いけないのよ」


「まぁ、いいじゃんいいじゃん、ね。」



別に顔も好みじゃないし・・・



「迷子どうしさ」


「あたしは違うっていってるじゃん」



よく知らないし・・・



「あっちだよ」


「わかった」



私は、ベンチから立って、悠一の少しあとを歩く

ふさふさのパーマがキモい。


でも・・・



「ねぇ、あんた、そのピアス、先生に怒られないの?」


「へへへ、普段はばんそうこう貼ってっからな。」


「地味ー」




私やばいかも・・・。